超音波断層法によるイカ遊泳運動の可視化
春日 伸弥(広域システム3年・10403)
提出:2001年12月25日
超音波断層法により生きているイカ撮影し、運動の様子を解析する。
鮮魚店で販売しているスルメイカ(生きていないもの)を標本として観察し、外観及び解剖図をスケッチした。また、標本に観察されるさまざまな特徴から、イカの遊泳運動形態を推測した。さらに、タコの標本(生きていないもの)とも比較を行った。
料亭で泳いでいるイカ(生きているもの)の遊泳運動を観察し、前項での推測結果と比較した。また、超音波断層法によりイカの断面図を撮影し、運動の様子を解析した。
標本の外観スケッチはFig.1 / Fig.2、解剖図スケッチはFig.3の通り。

[Fig.1] スルメイカの外観スケッチ(表側)

[Fig.2] スルメイカの外観スケッチ(裏側)
[Fig.3] スルメイカの解剖スケッチ
以下のようにして遊泳を行うとの推測を行った
1. 基本的にはジェット噴射による推進力を利用した遊泳を行う
Ø 外套膜と内臓の間は膜で仕切られており、内臓膜と外套膜の間には水が入るようになっている
Ø 外套膜の上部(ひれと反対側)には開放部(=吸入口)があり、外套膜の内側に水を通導できるようになっている
Ø 漏斗の穴は外套膜と内臓膜の間の空間につながっている
Ø 以上の点から、ジェット噴射は次のような手順で行われると考えた
1. 外套膜は筋肉でできているため、外套膜を広げることにより吸入口から能動的に水を取り込むことができる[1]
2. 外套膜内に水を十分吸い込んだ時点で、吸入口を筋肉の力で閉じる
3. その状態で外套膜を収縮させる
4. すると、外套膜の内側の水が漏斗から外に向かって勢いよく放出される
2. 方向転換は、ひれを飛行機のフラップの要領で用いて行う
3. ひれを使ってバックを行う
4. スミを吐く際には、漏斗から噴出する水に墨袋の濃縮墨を溶かしてイカスミを噴出する
5. 10本の足のうち、2本が伸縮性に富んでいた(=自在に伸び縮みできるものと考えられた)
6. 遊泳時にはFig.1の図面垂直方向手前側が上、Fig.2の垂直方向手前側が下であると考えられた(理由は以下の通り)
Ø Fig.1の側のほうが全般的に色が濃く、Fig.2の側は薄かった。外的からの防衛を考えた場合、水面の太陽光に溶け込むよう下側の色を薄く、海底の暗色に溶け込むよう上側の色を濃くしたほうが有利であると考えられる。
Ø 漏斗がFig.2手前の側についている。水野噴出は下向きに行われると考えるのが比較的自然である。
Ø 海中で直立して遊泳している(頭と鰭を結んだ直線が重力方向と並行になっている)という状態は考えにくい。遊泳方向が上下になってしまうため水平方向の移動が困難であり、また、ジェット噴射を利用して上下に激しく移動してしまうと水圧の変化が激しく、体の構造的に水圧変化に耐え切れないものと考えられる。
また、タコとの比較では次のような差異が認められた。
・ タコの吸盤は足から切り株のように直接生えていたが、イカは吸盤と足が細い(根のような)筋肉でつながっていた
・ タコは吸盤にリングがないが、イカには各々の吸盤にトゲのついた小さなキチン質(?) のリングがついていた
・ タコは足が8本。イカは10本。
・ タコの体の構造は、非常に流水抵抗が大きいものであった。イカに比べてあまり激しく遊泳しないタイプの生物である考えられる。
肉眼による観察、および超音波断層法による観察から、実際の遊泳形態は次のようなものであることが分かった。
・ ジェット噴射による遊泳の仕組みはほぼ予想通り
・ 吸入口には弁があり、それにより水の逆流を防いでいた
・ 遊泳時の体の方向(上下)についても予想通り
・ 漏斗は能動的に自由な方向に向けることが可能なようで、バックもジェット噴射によって行っていた
・ 鰭を機敏に動かすことで姿勢の調節を自在に行っていた。(予想よりもかなり激しく鰭を動かしていた。)方向転換も鰭をぱたつかせることで行っていた。
・ イカスミは漏斗から噴き出していた
心臓の拍動の様子は動画1、呼吸に伴う断面図の変化は動画2のようになった。
動画1における心臓の断面積(実寸)の時間変化はFig.4のようになった。観察時の心臓の拍動周期が約0.6[秒]であることが見て取れる。

[Fig.4]心臓断面積の時間変化
同じく、動画2においてFig.5の2点AB間の距離は、Fig.6のように時間変化した。呼吸に伴い外套膜と内臓膜の間の空間が体積伸縮している様子が見て取れる。

[Fig.5] 呼吸による断面変化の計測位置

[Fig.6] 呼吸におけるAB点間の時間変化
(以上)